KATOUICHIKOU

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クウキトメトロ 4

 地下鉄は動かない。僕は動かない地下鉄に乗っている。こんな時でも時間は止まることなく動いていて、今この時間はどこに向かっているのだろうか。みんなもほとんど動かない。僕はつり革につかまって立っている。向かいのあの人と目が合っている。

 デパートの一階の匂いが、僕がこの車両に乗り込んだ時から漂っている。デパートの一階の化粧品売り場の匂い。ファンデーションとか、その他の、僕の知らないいろいろな化粧品の匂い。そこにいるたくさんの女性たちの匂い。僕は化粧をしたことがない。それは僕が自らの手ではしたことがないという意味で、してもらったことなら、本当は、小学生の頃に母にふざけてされたこととか、大学生になってからは、酒を飲んで、ふざけて女友達にしてもらったりということが、経験としては、ある。自分では可愛くなるのではないかと結構本気で思っていたけど、ぜんぜんだった。鼻とか顎とか、男の骨格が余計に際立ってしまって、ただ気持ちが悪いだけで、あぁ、そうなのかというような、何か一つの、自分の可能性の無さみたいなものが証明されてしまったような気がした。化粧をされている時は気持ちが良かった。されていただけだから、化粧品の種類とか、使い方とか、そういうことは僕は何もわからない。どこかで見た、イブサンローランのファンデーションというか、コンパクトというかは、ケースが綺麗だったから少し欲しいなと思わなくはないけど、買っても僕にはどうしようもないから買っていないし、これからも、たぶん買わない。誰かが小さくいびきをかいて、すぐに止まる。